千葉家庭裁判所 昭和39年(少)2740号 決定 1965年5月20日
少年 K・S(昭二四・八・一六生)
主文
少年を千葉保護観察所の保護観察に付する。
理由
(罪となるべき事実)
少年は、市原市立○○中学校三年生在学中の昭和三九年一一月○○日午前九時一〇分頃、同校へ給食用の牛乳を運搬して来た小型自動車が校内の溝に落ちたことに対し、車の押し上げに協力するため、上履き靴のまま地上に出て押し上げ作業を了した後、汚れた上履き靴のまま、廊下を歩いたところを、同校教諭○岩○光(昭和五年一〇月二八日生)に発見され注意を受けたことを憤り、同日午前一〇時三〇分頃、自己と同様、従前右教諭から規律上の問題により注意を受けたことのある同学年生A(昭和二四年五月四日生)、B(昭和二四年一〇月一四日生)両名と話し合つた上、○岩教諭に暴行を加えることを共謀し、あり合わせた角棒、木刀、丸棒をそれぞれ携帯して、同校第二新校舎と第二校舎間の渡り廊下において、授業を終つて職員室に帰る途中の同教諭を待ち伏せ、「先生用がある」と呼び止め、同人が「用があるならこつちに来い」と答えた間に、少年において、その背後に回り、長さ六二糎、四糎角の角棒で後頭部を強打し、同教諭が両膝をつき倒れかかつたところを、Bにおいて、長さ九三糎、直径一糎の丸棒でその左顔面をAにおいて、長さ八二糎の木刀でその腹部をそれぞれ殴打し、よつて同教諭に対し、安静加療一ヵ月を要する右後頭部打撲傷(硬脳膜下出血)前歯三本折損、前胸部打撲傷の傷害を負わせたものである。
(法令の適用)
刑法一〇四条、六〇条
(処分の理由)
一、少年は知能は普通級であるが、学業成績は稍低位にあり、性格の上で可成の偏向を示している。少年は情意発散傾向強く、自己中心的で身勝手であつて内省心に乏しく、自尊感情を傷けられたと感ずくと強い反撥を示して反抗的となり、短気を起し、巨大な体格を利して暴力的行動に出易く、気分易変性を多く有している。
二、本件は少年の前記性格より必然的に発生した事件というべく、当裁判所は本年一月一四日、審判を開き、補導委託による試験観察に付し、補導委託施設興心塾に委託した次第であつたが、爾来、少年は充分反省し、反則もなく、よく勉学して中学課程を卒業し、帰宅後は従前アルバイトに勤務していた魚商の手伝を為す予定であり、性格的にも相当改善されたものと認められる。
三、少年の実父は自動車運転手を勤め、その実母は内職として露天商を手伝つて居り、少年の指導、監督については、共に相当関心を示してはいるが、生活に追われ、未だ保護能力が充分であるとは認められない。
四、以上の次第であつて、少年は本件非行の主謀者であり、再犯の虞れがないとはいい得ないから、今後、他より強大な助言、指導を受けて、始めて大過なき生活を送ることが可能と思われる故、少年を保護観察に付することが相当である。
よつて少年法二四条一項一号、少年審判規則三七条一項により主文のとおり決定する。
(裁判官 植田秀夫)